借地契約の期間満了に伴って「更新拒絶(契約終了)について知りたい」「更新拒絶に関するトラブルがある」という地主や借地人に役立つ内容です。記事の前半では借地権や借地契約の基本について、後半では更新拒絶するために必要な正当事由についてわかりやすく解説します。
借地権の種類と借地契約の基本
はじめに、借地権や借地契約の基本について再確認しましょう。基本をおさらいすることで、借地契約の更新拒絶についての内容が理解しやすくなります。
更新があるのは普通借地権。地主の更新拒絶には正当事由が必要
ひと口に借地権といっても、以下のような3種類があります。
・普通借地権
・定期借地権(一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権)
・一時使用目的の借地権
上記のうち、普通借地権では更新拒絶のために正当事由(正当な理由)が必要とされています。端的にいえば、地主が借地契約の更新拒絶をするのはかなりハードルが高いのが実状です(とはいえ、更新拒絶が不可能なわけではありません)。
借地権の契約期間は最低限の年数が決まっている
次に、借地権(普通借地)の契約期間を確認したいと思います。借地借家法の定めている、借地権の契約期間(存続期間)は、当初の契約期間が30年、その後1回目の更新では契約期間が20年、2回目以降の更新では契約期間が10年となります。
ただし、いずれの契約期間も当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間が契約期間となります。
参考:借地借家法第3条・第4条
また、期間を決めずに借地契約を結ぶと、契約期間は30年とみなされます。契約期間を決めている・いないに関わらず、借地契約は更新が可能で、地主側から更新を拒絶する場合は正当事由が必要となります(正当事由の内容については後述)。
*上記は1992年(平成4年)8月1日以降に成立した借地契約の場合
*借地借家法が施行される前の契約の場合、更新後の契約期間は堅固な建物30年、そのほかの建物20年
借地人の場合、一定期間前に通知をすれば更新拒絶ができる
一般的な借地契約(土地賃貸借契約書)で、更新についてどう規定されているかを確認しましょう。一例は次の通りです。
▽契約更新についての記載例
1. 甲(賃貸人)及び乙(賃借人)は協議の上、本契約を更新することができる。
2. 更新後の賃貸借期間は、最初の更新については、更新の日から○○年間とし、その後の更新については○○年間とする。
3. 本契約を更新する際、乙は甲に対し、更新後の新賃料の○○年分を更新料として支払う。
上記に加えて、更新について取り決めがある場合は「更新しない場合には○カ月前に通知をする」と契約書に記載されているケースもあると思います。借地人が更新を希望しない場合、契約書の記載内容に沿って更新しない意思を地主に通知すれば契約が終了します。
一方、地主からの借地契約の更新拒絶には、正当事由(正当な理由)が必要となります。
借地契約の更新方法には、3通りがある
普通借地権は、契約期間の満了時に更新されるのが原則です。更新方法には次の3通りがあります。
参考:借地借家法第5条1項・2項
[1.合意更新]
地主と借地人が話し合って合意した上で更新する方法です。もっとも一般的な更新方法と言えるでしょう。合意更新をする際には、借地人から地主に更新料を支払うのが通例です。更新後の地代についても、必要があれば双方で話し合い決定します。
[2.更新請求による更新]
借地人から地主に更新を求めることで、更新が成立する方法です。借地契約の更新を主体的に進めたい借地人に合う選択といえるでしょう。以下の内容が更新請求の要件となります。
・借地上に建物があること
・契約期間が満了したこと
・借地人が期間満了前に(または期間満了後すぐに)更新を請求したこと
[3.法定更新]
借地契約は長期間の設定が多いため、地主と借地人が更新自体を忘れているケースもあります。借地契約の期間が満了しても、借地人が今まで通り土地を使い続けていて、地主が正当事由に基づく異議を申し立てていない場合は、契約が自動的に更新されます。これを法定更新といいます。なお、法定更新が成立した場合、契約内容は従前(更新前)と同じ条件となります。
地主が借地契約の更新拒絶をするための正当事由とは?
地主が借地契約の更新拒絶をするには「正当事由」が必須です。ここでは、借地借家法で「正当事由」が具体的にどのように定義されているかについて解説します。
借地契約で更新拒絶が起こりうる典型的なパターン
先ほど、借地契約の更新には3通りあることをお話しました。このうち、更新拒絶の可能性があるのは、「更新請求による更新」と「法定更新」です。まず、「更新請求による更新」では、借地人からの更新請求に対して地主から正当事由のある異議が出され、これが認められた場合に更新拒絶の可能性があります。
また、「法定更新」では、契約満了後(借地権の消滅後)も借地人が土地を使用しているとき、地主から正当事由のある異議が出され、これが認められた場合に更新拒絶の可能性があります。
地主が更新拒絶をしたい場合、遅滞なく異議を述べる必要がある
いずれにしても借地契約の更新拒絶の意思を示したいなら、地主は「遅滞なく異議を述べる」必要があります。「遅滞なく」がどれぐらいの期間かについて明確な指針はありません。期間の長短のみから画一的に決められるわけではなく、具体的事情を勘案して判断されます。
異議申し立ての述べ方についても具体的な指針はありませんが、トラブルに発展することに備えると「内容証明郵便」で異議を述べるとよいでしょう。
借地借家法では、更新拒絶のための正当事由が定義されている
借地借家法には「借地契約の更新拒絶の要件」のための正当事由が明確に記されています。その内容を要約すると以下のようになります。
① 地主と借地人のそれぞれが土地の使用を必要とする事情
② 借地に関するこれまでの経過
③ 土地の利用状況
④ 財産上の給付(いわゆる立退料)の申し出をしているか
参考:借地借家法第6条
上記のうち、基本的な要因は①で、地主が土地の使用を必要とする事情と、借地人が土地の使用を必要とする事情を、まずは比較衡量します。 そして、この基本的な要因だけで正当事由の有無を判断できない場合に、②③④を補充的な要因として考慮します。
借地契約の更新拒絶についての総括
ここでお話してきたように、地主からの借地契約の更新拒絶は難しい面があります。ただし、裁判所から更新拒絶が認められないということではありません。正当事由をしっかり示せれば、契約を終了させられる可能性もあります。
一方、借地人側から見ると、たとえば地代を支払っていないなど、相手側の正当事由となる問題がなければ、地主から借地契約の更新拒絶をされてもそれに応じる必要はありません。
以上が借地契約の更新拒絶の基本的な考え方です。これを踏まえて、「正当事由があるので更新拒絶をしたい(地主)」「正当事由がないのに更新拒絶をされて困っている(借地人)」などでお悩みの方は、私たちにお気軽にご相談ください。
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