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「建物買取請求権」を借地トラブルに強い弁護士がわかりやすく解説!

建物を査定するイメージ

建物買取請求権は、借地契約の中でもトラブルに発展しやすいテーマのひとつです。借地人も地主も、建物買取請求権の中身をしっかり理解することで、無用なトラブルを防げます。

ここでは以下のテーマについて、借地・底地トラブルに強い弁護士がわかりやすく解説します。地主も借地人も役立つ内容です。

・建物買取請求権とはどんな制度か
・建物買取請求権を行使できる期限とは
・建物買取請求権の対象範囲は
・買取金額を決める方法は
・建物買取請求権が排除できるケース

「建物買取請求権」とはどんな制度か、わかりやすく解説

建物買取請求権は、借地人が地主に対して行使できる権利です。詳しい内容を確認していきましょう。

「建物買取請求権」を使えば、借地上の建物の買い取りを求められる

建物買取請求権とは、借地上の建物を買い取るよう、借地人が地主に対して請求できる権利のことです。建物買取請求権は、借地権の存続期間が満了して契約の更新がないとき(借地借家法第13条)、または地主が借地権の譲渡・転貸を承諾しないとき(借地借家法第14条)に、地主に対して請求することができる権利です。

この建物買取請求権が認められたのは、借地上に投下した資本の回収と、建物の社会経済的効用の維持を図るためとされています。
また、請求できる金額は時価(=その時点の市場取引価格)になります。

建物買取請求権のポイントを3つのキーワードでわかりやすくまとめると、以下のようになります。

・どんなときに使える?
(借地借家法第13条の場合):借地契約が満了で更新がないとき、借地上に建物があるとき
( 借地借家法第14条の場合):有効な借地権があるとき、第三者が借地人から建物を取得したとき、地主が借地権の譲渡・転貸を承諾しないとき
・何を?:建物の買い取りを
・いくらで?:時価で請求

借地契約が終わるたび、建物を壊していたら損失になる

建物買取請求権は、これを排除する特約を借地契約で規定しても無効となります。借地人等が有する強い権利のひとつです。

建物買取請求権が設けられている理由は、借地契約が終了するたびに、借地上の建物を取り壊すのはもったいないからです。取り壊す建物の中には、まだ利用価値があるものも含まれるでしょう。これらをすべて取り壊していたら、大きな経済的損失が発生します。

「建物買取請求権」行使の期限は、5年または10年の時効で消滅する

建物買取請求権を借地人がいつまで行使しなければならないかについては、民法が規定する「一般債権の消滅時効」と同じ時効期間で消滅するという解釈が一般的です。

つまり、建物買取請求権は、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」で時効消滅することになります(民法第166条1項)。

建物買取請求権の対象範囲は?買取金額を決める方法は?

建物買取請求権の対象範囲は「建物+住宅設備など」、買取金額は当事者間の話し合いで決めるのが基本です。詳しい内容を確認していきましょう。

「建物買取請求権」の対象範囲は、建物以外に建物設備にも及ぶ

建物買取請求権の対象範囲には、当然ながら建物が含まれます。ただし、木造住宅で法定耐用年数を超えているような物件の場合は、市場価値が低い分、安い金額で鑑定されます。

建物以外には、建物に付随する設備(例:全館空調設備、床暖房、給排水管など)や敷地内にある門扉、塀、カーポートなども請求権の対象となります。

「建物買取請求権」の買取金額は当事者間の話し合いで決める

冒頭で申し上げた通り、建物買取請求権で請求できる金額は時価(=その時点の市場取引価格)です。といっても、借地借家法などに細かい規定はありませんので、当事者間の話し合いで決めるのが基本となります。

ただ、一般の方が建物やそれに付随する設備の評価をするのは現実的ではありません。妥当な金額を設定するには、不動産鑑定士に依頼するのが賢明です。仮に、地主に請求を拒否されても、不動産鑑定士による査定価格は裁判のときの有力な資料になります。

なお、「時価」は「建物自体の価格」に建物が存在する「場所的利益」を付加した金額であるとされています。「場所的利益」の金額は、実務上、土地の更地価格の10%から20%程度とされているケースが多いです。

建物買取請求権が使えないケースをわかりやすく解説

この記事の冒頭で申し上げたように、建物買取請求権はこれを排除する特約を借地契約で規定しても無効となるのが基本です。しかし、借地借家法第13条の買取請求権は、定期借地権(一般定期借地権および事業用借地権)では行使できません。また、一時使用目的の借地権では、借地借家法第13条、第14条の買取請求権ともに行使できません。

それぞれの内容を詳しく確認していきましょう。

定期借地権:一般と事業用の定期借地権では借地借家法第13条の買取請求権を排除できる

定期借地権は、契約満了後の更新のない借地権のことです。定期借地権の場合は、借地借家法第13条の建物買取請求権を排除した内容(請求権が使えない内容)で契約することが可能です。

一般的な借地契約では、「借地上に建物がある」「更新拒絶の正当事由がない」などの条件に該当する場合、契約満了後も更新されます。これに対して、定期借地権は契約更新が認められず、期間満了になったら地主に土地を必ず返すことが決められています。

なお、定期借地権には次の3種類があります。

・一般定期借地権
・事業用借地権
・建物譲渡特約付借地権

上記のうち、「一般定期借地権」と「事業用借地権」は契約満了後、更地にした上で地主に返還するのが原則です。そのため、借地借家法第13条の建物買取請求権を排除した内容での契約が可能です。

一時使用目的の借地権:一時的に土地を使用する場合、買取請求権は認められない

一時使用目的の借地権とは、文字通り、その土地を一時的に使用する目的の借地権です。一時的に使用する目的の一例としては、工事現場用や選挙事務所用のプレハブを建てるために一時的に土地を使うようなケースです。一時使用目的の借地権では、通常の借地権で認められている以下のような条件が適用されません。

・長期の存続期間
・契約の更新
・建物買取請求権 など
参考:借地借家法 第25条

建物買取請求権が理解されていないことで起こるトラブルも多い

ここでは建物買取請求権について、一般の方々にもわかりやすいよう解説してきました。

建物買取請求権は、借地契約で広く適用される借地人の権利です。それにも関わらず、請求権の存在が広く認知されていなかったり、正しく理解されていなかったりすることで深刻なトラブルに発展するケースも少なくありません。

当事務所は、底地・借地トラブルに強い法律事務所です。これまで数多くのトラブルを解決してきた知見をもとに、適切なアドバイスとサポートを実行します。お気軽にご相談ください。

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