借地権(借地契約)の更新料についての賃貸トラブルは少なくありません。この現実を考えると、土地の所有者も借地人も「更新料の基本」を押さえておくのが賢明です。基本を知ることで、不要な賃貸トラブルを避けたり、相手方との良好な関係を築きやすくなったりします。
ここでは次の3つをテーマに中心にわかりやすく解説していきます。
・借地権の更新料に関するトラブルが多い理由
・借地権の更新料の支払い義務が発生するケース
・借地契約で更新料を決めていない場合の対応
これから借地契約書を結ぶ人も、すでに契約を結んでいる人も役立つ内容です。
借地権の更新料に関するトラブルが多い理由とは?
借地権(借地契約)の更新料に関するトラブルが多い理由は、借地借家法などの法律で「借地権の更新料」に関する明確な規定がないからです。そのため、以下のようにケースバイケースで借地権の更新料が取り扱われているのが実情です。
・借地契約書に更新料について規定されているので支払う
・契約書で規定されていなくても、円満な関係を維持するために慣例として支払う
・口頭で更新料を約束したので支払う
・契約書でも口頭でも更新料を決めていないので支払わない
やはり、トラブルに発展しやすいのは、借地契約書に借地権の更新料についての規定がない場合でしょう。現時点で決めていない場合は、折を見て、土地の所有者と借地人の間で「更新料を設定するか」「(更新料を設定する場合)いくらにするか」について取り決めることをおすすめします。
話し合いをスムーズに進めるために、賃貸トラブルを専門とする弁護士の助言やサポートを受けながら交渉していくのも一案です。
借地権の更新料の支払い義務が発生するケースは?
前述の通り、借地権の更新料については曖昧な部分があります。では、端的にいって、更新料の支払い義務があると考えられるのは、どのようなケースでしょうか。
一般的に、借地契約書に借地権の更新料の規定があるケースでは、借地人が土地の所有者に対して更新料を支払う義務があると解釈されます。たとえば、ADR法を利用した模範的な「土地賃貸借契約書」では、更新についての規定の見本を以下のように示しています。
*ADR法:裁判外の紛争解決を促進する法律の略称
第10条(更新)
1.甲及び乙は協議の上、本契約を更新することができる。
2.更新後の賃貸借期間は、最初の更新については、更新の日から○○年間とし、その後の更新については○○年間とする。
3.本契約を更新する場合は、乙は甲に対し、更新後の新賃料の○○年分を更新料として支払う。
引用:JAMCO(一社)日本民事紛争等和解仲介機構「土地賃貸借契約書」
上記を参考にすると、「更新期間は何年か」と「更新料がいくらか」を明確にすることができ、賃貸トラブルのリスクを軽減することができます。
借地契約で更新料を決めていない場合の対応は?
では、借地契約書に借地権の更新料についての規定がない場合はどうでしょうか。
借地権の更新料についての規定がない場合、法的には、土地の所有者との間で「黙示的に更新料支払いの合意が成立していると認められる(明示がなくても、当時の状況から更新料支払いの合意が成立しているといえる)特段の事情」がない限り、借地人は、更新料を支払う義務がないといえます。
しかし、土地の所有者の立場で考えると、「更新料が入ると思っていた」あるいは、「過去の更新時に更新料が支払われていた」にも関わらず、借地人が更新料を支払わなければ、心理的な引っかかりになって将来の賃貸トラブルの火種になりかねません。
土地の所有者との関係が不安定になると、具体的に以下のようなトラブルに発展する可能性があります。
・地主から建替えの許可をもらえない
・地主から譲渡の承諾をもらえない
地主から建て替えの許可や譲渡の承諾をもらえない場合でも、地主の承諾の代わる許可の裁判を得るといった対応をすることができますが、許可の裁判を得るまでに時間も費用もかかります。そのため、このようなことを考えると、「法的には更新料を払わなくてよい」と短絡的に考えず、土地の所有者と借地人のお互いの主張を丁寧にすり合わせていく必要があるかもしれません。
借地権の更新料の相場はどれくらい?
これから土地貸借契約を締結するので(または更新するので)「借地権の更新料の相場を知りたい」という方もいらっしゃるでしょう。また、契約書で借地権の更新料の金額を決めていないので相場を知りたいというケースもあるかもしれません。
借地権の更新料の相場は、一般的に「借地権価格の5%程度」といわれています。ちなみに借地権価格とは、更地価格に借地権割合を乗じた金額のことです。借地権の更新料の相場の計算例は次の通りです。
[条件]
・更地価格:坪当たり100万円
・土地面積:50坪
・借地権割合:60%
・更新料を借地権価格の5%で計算
[計算式]
・借地権価格の計算:坪単価100万円×50坪×借地権割合60%=3,000万円
・更新料の計算:借地権価格3,000万円×5%=150万円
借地権の更新料を支払わないことを理由に契約解除ができるか?
冒頭で触れたように、借地権の更新料をきっかけにした賃貸トラブルは少なくありません。たとえば、賃借人が「更新料を支払わない」と主張しているが、これに対抗するために「契約を解除したい」と考える土地の所有者もいらっしゃるかもしれません。
これについては過去の判例を参考にすると、「賃借人が更新料を支払わない=契約解除」というような単純な考え方はできません。以下のような事柄を踏まえつつ、土地の所有者と借地人の「信頼関係が破壊されたか否か」が総合的に判断されています。
・当事者双方の事情
・更新料が決まるまでの経緯
・契約書に条項や賃貸人の署名があるか など
借地権の更新料は、借地契約の中でもとくにセンシティブなテーマ
ここでは、「借地権(借地契約)の更新料」をテーマに解説してきました。ここでお話した内容のポイントは以下の通りです。
・借地権の更新料に関するトラブルは多い
・賃貸借契約書に借地権の更新料の規定がある場合、更新料を支払う義務があると解釈される
・借地権の更新料についての規定がない場合、土地の所有者との間で「黙示的に更新料支払いの合意が成立していると認められる特段の事情」がない限り、借地人は、更新料を支払う義務がない
・法的に借地権の更新料の支払義務がないといえる場合でも、土地の所有者と借地人間で慎重に話し合うことが大事
・更新料が将来の賃貸トラブルの火種になることもある
・借地権の更新料の相場は、一般的に借地権価格の5%程度
・借地権の更新料を支払わないことだけを理由に契約を解除するのは難しい
借地権の更新料は、借地契約の中でもとくにセンシティブなテーマです。ちょっとした行き違いから、深刻な賃貸トラブルに発展するケースもあるため、リスクを回避したい場合は、不動産を専門とする弁護士に早めに相談したり、サポートを受けたりするのがよいでしょう。
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