
借地上の建物の建て替えにあたって、借地人が知っておくべき次のテーマをわかりやすくまとめました(地主の方にも役立つ内容です)。
・建て替えに伴って承諾料を支払うべきか
・建て替え時の承諾料の相場はどれくらいか
・地主に建て替えを拒否された場合はどう対応すべきか
借地上の建物の建て替え・増改築をする際、「地主への相談・連絡を怠る」「承諾料を支払わない」などの理由でトラブルや契約解除に発展する可能性もあります。トラブル防止にぜひ、本稿をお役立てください。
借地上の建物の建て替えで、承諾や承諾料が必要なケースは?
借地権の契約期間中に「建物を建て替えたい」という借地人からの要望は多いです。「土地貸借契約書」内に増改築の禁止特約がある場合は、建物の建て替えにおいて地主の承諾や承諾料が必要となります。詳しい内容を確認しましょう。
「土地貸借契約書」で建て替えを禁じている場合、地主の承諾が必須
借地上の建物の建て替えをしたい場合、まず確認したいのは地主と借地人が交わした「土地貸借契約書」の内容です。契約書に「建物の増改築の禁止」の特約(条項)があり、建物の増改築をする場合には地主の事前承諾が必要と規定されている場合は、地主の承諾が必須です。また、承諾に伴い承諾料が必要となるケースも多いです。
▽「建物の増改築の禁止」の特約例乙(賃借人)は、予め甲(賃貸人)の書面による承諾がなければ、借地上の建物を増改築したり、または再築したりすることができない。
注意したいのは特約の見出しが「建物の増改築の禁止」のように、一見すると建て替え(再築)に関係ないように見えることです。しかし、「改築」は、再築(建て替え)を含むと解釈されていますので、上記の特約例のように「再築することができない」と明記されていなくても、再築(建て替え)の場合は地主の事前承諾が必要です。
契約書に上記のような特約があるにも関わらず、地主に無断で増改築や再築をすれば(地主側からの)契約解除の可能性もありますので注意しましょう。
地主の承諾が不要なケースでも断りを入れるのが間違いない
では、土地貸借契約書に「建物の増改築の禁止」の特約がなければ、借地人は地主の許可を取らずに建て替えを自由にしてよいのでしょうか。
この場合、借地人は地主の承諾を得ずに建て替えることが可能です。しかし、相談なしで建て替えをすることで地主との信頼関係を損ねて、今後のトラブルの火種となる可能性もあります。土地貸借契約書に「建物の増改築の禁止」の特約がない場合でも、地主への断りを入れてから、建て替えをするのが無難でしょう。
地主が一定期間、異議申立てをしなければ「承諾した」とみなされる
借地上の建物の建て替えについて、地主から承諾を得る方法は2通りあります。1つ目の方法は、借地人から建て替えの通知を受けた地主が承諾の意思表示をすることです。
そして、2つ目の方法は、借地人から建て替えの通知を受けた地主が2カ月以内に異議申し立てをしないことです。この場合、地主が承諾をしたとみなされます。
なお、借地権の契約期間(存続期間)が満了する前に、建物を取り壊し、新たな建物に建て替えたとき(築造したとき)、地主の承諾がある場合に限り、借地権が20年間存続(延長)されます。
参考:借地借家法7条1項
*ここでいう「20年間存続」とは、下記のうち、いずれか早い日からの経過期間です。
・地主の承諾があった日
・建物が築造された日
ただし、残存期間がこれより長いとき、または当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間になります。
建て替えの際の承諾料が法律で決められているわけではない
前述のように、「土地貸借契約書」内に「建物の増改築の禁止」の特約がある場合は、建物の建て替えにおいて地主の承諾が必須です。また、これに伴い承諾料が必要となるケースが多いです。
ただし、建て替え承諾料については、法律で規定されているわけではありません。しかし、慣習や判例を踏まえると、「建物の増改築の禁止」の特約があり、建て替えを禁じているなら承諾料を支払うのが賢明です。
建て替えにより、借地人は何らかの経済的利益を得られます。その利益を土地の所有者である地主に還元するのは当然という考え方もできます。
借地上の建物の建て替えの承諾料の相場は?
建て替えの承諾料をいくらにするかは、ケースバイケースです。地主と借地人の話し合いによって承諾料を決定するのが望ましいでしょう。ただし、目安となる承諾料の相場もあります。相場は「全面的改築のケース」と「全面的改築に至らないケース」で変わってきます。
全面的改築の場合の建て替え承諾料の相場:更地価格の3〜5%程度
全面的改築の場合、建て替え承諾料は、通常、更地の市場価格(時価)の3%を基準とし、これに改築による床面積の増加の程度や賃貸物件の建築等による収益の増加等の土地利用効率の増大などを加味して5%程度までの間で決められます。仮に、更地の市場価額が2,000万円の土地であれば、建て替え承諾料の相場は以下のようになります。
▽建て替え承諾料の計算例(全面的改築の場合)
2,000万円×3%=60万円
2,000万円×5%=100万円
→承諾料の相場60〜100万円程度
全面的改築に至らない場合の建て替え承諾料の相場:更地価格の1%~3%程度
全面的改築に至らない場合、建て替え承諾料は、その増改築の程度に応じて更地価格の1%~3%程度で決められます。仮に、更地の市場価額が2,000万円の土地であれば、承諾料の相場は以下のようになります。
▽建て替え承諾料の計算例(全面改築に至らない場合)
2,000万円×1%=20万円
2,000万円×3%=60万円
→承諾料の相場20~60万円程度
借地上の建物の建て替えを地主に拒否された場合は?
とはいえ、借地上の建物の建て替え自体を地主が拒否するケースもあります。拒否されても裁判所で借地非訟の手続きをとり、「地主の承諾に代わる許可」を得られれば建て替えが可能です。その内容を詳しく見ていきましょう。
地主に拒否されても、裁判所の許可があれば建て替えができる
ここまでお話ししてきたように、地主が承諾すれば、借地人は借地上の建物の建て替えや増改築ができます。しかし、地主から建て替えを拒否された場合、借地人は裁判所で借地非訟の手続きが申立てられます。そして、申立てが裁判所に認められ、「地主(借地権設定者)の承諾に代わる許可」を得られれば借地人の要望通り、建て替えを行うことができます。
参考:借地借家法17条2項
なお、裁判所が建て替えを許可した場合には、借地人から地主へ支払う承諾料を認めるケースがほとんどです。
地主の許可を得ないまま建て替えると契約解除のリスクがある
注意したいのは、地主が拒否したからといって、「借地上の建物の建て替えを勝手にしてはいけない」ということです。地主の許可を得ないままに増改築(建て替えも含む)をした場合、土地賃貸借契約を解除されるリスクがあります。
借地上の建物の建て替えで弁護士に相談するのが望ましいケース
借地上の建物の建て替えにあたり、以下に該当するケースでは弁護士に相談することをおすすめします。
・地主との関係が普段から悪い
・建て替えに伴い土地の利用目的を変更したい
・土地賃貸借契約書が見つからない(存在しない)
・すでに建て替えに伴い地主(または借地人)とトラブルになっている
当事務所は、底地・借地トラブルに強い法律事務所です。借地上の建物の建て替えに関する条件交渉や、裁判所への許可の申し立てなど、借地上の建物の建て替えのことでお困りの借地人の方はお気軽にご相談ください(初回相談料30分無料)
借地権に強い弁護士に
お任せください


