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水漏れの時、借主の損害を賠償するべき?

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マンションの配水設備に欠陥があったことが原因で、借主の部屋の天井から水が漏れて室内が水浸しになってしまいました。

借主は、じゅうたんや衣類が汚れた、しばらくホテル生活を余儀なくされたと言って、損害賠償を求めています。この場合、貸主は、借主の損害を賠償しなければなりませんか。

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貸主は、じゅうたんや衣類のクリーニング代を賠償しなければなりません。じゅうたんや衣類の汚れがひどく、買い換えを余儀なくされた場合には、これらの代価を賠償する義務があります。

また、漏水事故の程度がひどく、借主がホテルに宿泊するのもやむを得ないといえる場合には、貸主は、相当程度の宿泊費を賠償する義務があります。

貸主には排水設備を直す義務がある

居住用のマンションの部屋を貸す場合、部屋の使用に支障をきたすような欠陥が生じた場合には、貸主はこれを修繕しなければなりません(民法606条1項)。

マンションの配水設備の欠陥は、借主が居住するのに「不適切な状態」だといえます。ですから、貸主は欠陥が生じないよう維持管理する責任があり、万が一、問題が発生した場合には、これを修繕しなければなりません。

質問のケースでは、貸主にマンションの配水設備の欠陥を修繕すべき義務があったのにそれを果たさなかった、つまり「債務不履行」があったことになります。ですから貸主は、借主に対し、修繕を怠ったことによって被った損害を賠償しなければなりません(民法415条)。

貸主が損害を賠償すべき範囲

では、貸主は、具体的にどの範囲まで損害を賠償しなければならないのでしょうか。

損害賠償の範囲について、判例は「債務不履行と相当な因果関係にある損害について債務者には賠償責任がある」としています。つまり、この場合でいえば、貸主は排水設備の欠陥が直接の原因となって発生した被害に限り、賠償しなければならないということです。

質問のケースでは、漏水事故により、借主のじゅうたんや衣類が汚れたということですから、まずはそのクリーニング代を貸主は賠償しなければならないでしょう。クリーニング代は、排水設備の欠陥及び水漏れが直接の原因となって発生した損害だといえるからです。

また、じゅうたんや衣類の汚れがひどく、買い換えを余儀なくされた場合には、これらの代価も賠償しなければなりません。ただし、この場合の損害額は、買い換えたじゅうたんや衣類の購入価格そのものではなく、漏水事故当時の「時価」となります。

次に、質問のケースでは、借主は漏水事故によりしばらくの間ホテル生活を余儀なくされたということですが、漏水事故がたいしたものではなく、ホテルに宿泊するほどではなかったという場合には、その宿泊費は「貸主の債務不履行と相当な因果関係にある損害」とはいえないため、認められません。

問題は、請求できるとしても、この宿泊費が妥当なものだったかどうかです。

この場合の宿泊は、あくまでも自室の代わりということですから、宿泊したホテルが余りに高級なホテルであれば、宿泊費全額についての損害賠償請求は認められず、相当程度まで減額されることになるでしょう。