借主に身分を偽られた
マンションの一室を、大手銀行の社員だという方に貸したのですが、実は身分を偽っており、定職にも就いていない人であることが判明しました。
定職に就いていないのであれば、今後きちんと家賃を払ってくれるか不安です。
この場合、身分を偽られたことを理由に契約を解除することはできるのでしょうか。
銀行員ではなく定職に就いていなかったことが判明しただけでは、契約の解除はできないでしょう。
嘘の申告だけでは契約解除できない
貸主としては、借主が確実に家賃を支払ってくれる人か、契約中に非常識で理不尽なクレームをつけてこないか、あるいは立ち退く際に法外な要求を出す人でないか、非常に気になるところでしょう。
そこで貸す側としては、契約時にあらかじめ入居希望者の職業や収入を確認することは、当然のことだと思われます。
こうして契約が結ばれた後に、入居者が職業を偽っていたことが判明すれば、大家さんとしては相手に強い不信感を抱き、契約を解除したいと考えるのも無理はありません。
借主の一番基本的な情報である職業や収入に関して嘘をつかれれば、貸主としても、「肝心な点でだまされた以上、もはやこの人とは信頼関係を築くことができない」と考え、契約を即終了させたいと思うでしょう。
しかし、賃貸借契約を解除するためには、何らかの契約違反があるだけでは不十分で、信頼関係が破壊されたといえなければいけません。
このケースでは、職業や身分を偽っていたということですが、その事実だけを理由に信頼関係が破壊されたということは困難です。
賃貸借契約における借主の基本的な義務は、家賃を支払うこと、部屋の使用に関するルールを守ることです。そうである以上、こうした決まりに違反せず、その他の契約上の義務についても確実に守っている限りは、いくら職業や身分を偽られたとしても、信頼関係が破壊されたとまではいえないでしょう。
質問の事例でも、銀行員ではなく定職に就いていなかったことが判明しただけでは、契約の解除はできません。
信頼関係が破壊されたと認められるためには、その後に家賃を滞納した、あるいは部屋の使用規定を守らなかった、などの事実が必要となるのです。
なお、契約時に職業を偽られたことを理由に、契約期間終了後の更新を拒否できないかということも問題になりますが、やはりこれだけで更新を拒否することは難しいでしょう。
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