サブリース契約を更新拒絶したい
マンション1棟を所有しており、20年前、不動産会社との間で、サブリース契約(普通借家契約)を締結しました。
契約当初より周辺の都市開発が進んだため、マンションは常に満室状態です。もうすぐ更新の時期なので、これを機にサブリース契約を終了させたいと考えております。更新拒絶により契約を終了させることはできるでしょうか。
サブリース契約でも更新拒絶には正当事由が要求されるため、正当事由が認められない限り、直ちに契約を終了させることはできません。
サブリース契約にも借地借家法が適用される
建物の所有者(オーナー)が、不動産会社(サブリース会社)に建物を一括して賃貸し、サブリース会社が入居者に転貸して収益を得る事業をサブリース事業といいます。
所有者(オーナー)とサブリース会社間の賃貸借契約は、サブリース契約(マスターリース契約ということもあります)と呼ばれます。
サブリース契約(マスターリース契約)は、普通借家契約で契約期間も長期にわたるのが通常です。そのため、中には、状況の変化に伴い、期間満了時にオーナー側からサブリース契約の更新拒絶をするケースもあります。
この場合、①サブリース契約にも借地借家法が適用され、更新拒絶には借地借家法28条の正当事由が要求されるのか、②借地借家法が適用されるとしても、正当事由の有無は通常の賃貸借契約と同様の判断基準になるのか、という点が問題となります。
この点、①については、サブリース契約も建物の賃貸借契約であるため、借地借家法が適用されるとするのが判例です(最高裁平成15年10月21日判決)。
また、②について、判例の多くは、正当事由の判断においてサブリース契約であることは特に重要な考慮要素となるわけではなく、通常の賃貸借契約と同様の判断基準になるとしています(札幌地裁平成21年4月22日判決など)。
そのため、サブリース契約の更新拒絶には正当事由が必要であり、その判断は通常の賃貸借契約と同様になる可能性が高いでしょう。
サブリース契約を締結するにあたって注意すべき点とは?
サブリース事業では、サブリース会社による長期の家賃保証のもとで、建物所有者(オーナー)が金融機関から多額の融資を受けてマンションなどを建築する形態がとられることがあります。
サブリース事業は、オーナーにとっては、毎月一定の賃料が確実に回収でき、かつ空室リスクの問題もなくなるので、ローンを確実に返済できる計画が立てられます。そのうえ、家賃保証があれば、この計画の確実性も増すように思われるので、オーナーは、
家賃保証があるから多額のローンを組んでも安心と思ってしまいがちです。
ところが、家賃保証があるからといって、保証された賃料が契約終了時まで必ずしも確実に支払われるわけではありません。
サブリース契約にも借地借家法が適用されるとするのが判例の立場ですから、サブリース契約にも、賃料減額請求に関する借地借家法32条が適用されます。借地借家法32条は、強行法規なので、家賃保証という特約で、サブリース会社による賃料減額請求を防げるわけではないのです(もっとも、家賃保証の事実は賃料減額請求の判断において重要な事情として考慮はされます。)。
金融機関への返済を抱えるオーナーにとっては、サブリース会社が支払う賃料が減額されればローンの返済が滞りかねず、まさに死活問題となります。そのため、サブリース会社から賃料減額請求を受けるのを防止する対策を立てておくことが、オーナーにとって非常に重要な課題となります。
この点、サブリース会社から賃料減額請求を受けるのを防止する対策としては、当初から、サブリース契約を普通借家契約ではなく、定期借家契約にすることが一応考えられます。
定期借家契約では、賃料の改定に関する特約がある場合、借地借家契約32条は適用されないため(同法38条7項)、家賃保証があればサブリース会社は賃料減額請求ができなくなります。
もっとも、実際には、サブリース契約を定期借家契約とすることに応じてくれるサブリース会社はあまりないと思われます。
サブリース契約が普通借家契約である場合、賃料減額請求に対してオーナーとしては、サブリース会社からの賃料減額請求に安易に応じず、粘り強く交渉していくことが肝要です。
それでもサブリース会社が執拗に賃料減額請求をしてくるとか、サブリース会社が賃料を延滞(または滞納)するような場合は、思い切って、サブリース会社を変更することやサブリース契約を解消して自主管理に切り替えてしまうことを検討してもよいでしょう。
なお、サブリース事業において、家賃保証などの契約条件の誤認を原因とするトラブルが多発し、社会問題化したため、2020年(令和2年)6月12日に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が成立しました。この法律は、サブリース契約をめぐるトラブルを未然に防止するため、サブリース業者に、賃料の減額リスクなどに関して不当な勧誘をしないことやサブリース契約の締結前にオーナーに賃料・契約期間等を記載した書面を交付して説明することを義務付けています。
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