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貸主と借主の義務

貸主の義務

賃貸借契約を締結した場合、貸主は、借主に建物を使わせる義務を負担します。

その際、貸主は、建物を「適切な状態で」使用させる義務があるため、欠陥が見つかった場合は、その欠陥部分を修繕しなければなりません(民法606条1項)。

たとえば、窓が割れていたり、備え付けの給湯設備が故障している場合には、支障なく使えるように修繕する義務があります。この義務は、天災で壊れた場合や第三者が壊した場合にも発生します。

さらに、借主自身が自腹で故障箇所を修繕するなど、建物を維持するのに必要な費用を支払った場合には、貸主はその費用を支払わなければなりません(必要費償還義務 民法608条1項)。 

また、借主がドアのカギを防犯性の高いものに交換するなど、建物に改良を加えて「価値」を高めた場合には、貸主はその価値の増加分、もしくは借主が支出した費用のどちらかを支払わなければならないという義務もあります(有益費償還義務。民法608条2項)。

借主の義務

賃貸借契約を締結した場合、借主は、貸主に賃料を支払う義務を負担します。通常、賃料は、翌月分を前月末日までに「前払い」で支払うように定めることが多いでしょう。

また、家賃の他に借主が支払うべきものとして敷金があります。賃貸借契約においては、敷金の預け入れの合意をするのが一般的ですが、合意した場合、借主は決められた敷金を貸主に預けなければいけません。なお、借主が賃貸建物を明け渡した後、滞納賃料や借家の原状回復にかかった費用を差し引いてもなお敷金が残ったときは、貸主には残金を返還する義務があります。

さらに、借主は、借りた建物を壊したり汚したりしないように、注意深く使う義務(善管注意義務)を負担します。借主がこの義務に違反して、過失によって窓ガラスを割ってしまった場合や、壁に穴を開けてしまった場合には、借主は貸主に対して損害賠償責任を負うことになります。

また、借主は、賃貸借契約が終了した際に、賃貸建物に備え付けたものを取り外したうえで、もとの状態(原状)に戻してから返還する義務(原状回復義務)を負担します。たとえば、エアコンを取り付けた場合は、そのエアコンを取り外し、前の状態に戻してから明け渡さなければなりません。

借主が賃貸借契約に違反した場合でも、それだけで直ちに契約解除はできない

上記のとおり、借主は、貸主に対し、賃料を支払う義務や借りた建物を壊したり汚したりしないように注意深く使う義務(善管注意義務)を負担しています。

また、通常、賃貸借契約では、貸主に承諾なしに賃貸建物を第三者に転貸・使用させてはならない、貸主の承諾なしにペットを飼ってはならない、近隣に迷惑を及ぼす行為をしてはならないといった規定が設けられています。

借主が賃貸借契約に違反する行為をした場合、貸主は契約を解除することができます。
ただし、借主に契約違反行為があったとしても、貸主は、それだけですぐに契約を解除できるわけではありません。

賃貸借契約は、ある一定の期間、継続することが前提となっている契約であり、貸主・借主間の「信頼関係」が基礎となっています。

そこで判例は、借主が契約違反行為を行った場合でも、貸主と借主との信頼関係が破壊されたといえなければ、貸主は簡単に契約を解除することができないとしています。

信頼関係の破壊について、特に最近の判例は、個別の事情を考慮して判断する傾向にあります。ですから、借主に契約違反行為があったとしても、事情によっては契約が継続される可能性がありますので、貸主としては注意する必要があります。

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